第92章 スーツ

有川家。

有川紘樹が玄関をくぐると、リビングのソファに有川夫人が背筋を伸ばして座っていた。近づくや否や、夫人は利用限度額付きのブラックカードを彼の前へ叩きつけ、頭ごなしに問い詰める。

「今日バッグを買いに行ったら、限度額に達してるから使えませんって言われたのよ! ずいぶんいい息子ね。私に上限のあるカードを寄越すなんて!」

それでもまだ腹の虫が収まらないのか、有川夫人は午後に自分が味わった屈辱を最初から最後までこと細かにぶちまけた。話し終える頃には、すっかり傷ついた顔になっている。

「みんながどんな目で私を見てたと思うの? 有川家はバッグのいくつかも買えなくなったって、そう思われたのよ...

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